前回の記事で、拭き掃除には有効塩素濃度80ppm以上が目安として示されているとお伝えしました。すると次に出てくるのが、では手元にあるものは何ppmなのか、という疑問です。実は、ラベルに書かれた数値と、いま使おうとしている液体の数値は同じとは限りません。本記事では、濃度を確かめる方法と、測るべきタイミングを整理します。
1. 表示された数値と、いま手元にある数値は違う
次亜塩素酸水は、保存状態や時間の経過によって有効塩素濃度が低下します。光が当たる場所に置いていた、開封してから時間が経った、詰め替えを繰り返した。こうした条件で、当初の数値は保てなくなります。
この点は公的機関の調査でも確認されています。国民生活センターが市販の次亜塩素酸水15銘柄を対象に行ったテストでは、有効塩素濃度の表示があった14銘柄のうち8銘柄で、購入時期によっては測定値が表示の9割以下になる場合があり、中には2割以下のものもあったと報告されています。
さらに、同テストでは15銘柄中10銘柄に、表示された濃度が「製造時」や「充填時」のものである旨の記載がありました。製造時の数値であれば、店頭に並び、購入され、使い始める頃には、それより低くなっている可能性があります。つまり、ラベルの数値は出発点の記録であって、現在地ではありません。
2. 濃度を確かめる手段(試験紙・測定器)
手元の状態を知るには、測るしかありません。測定の手段は大きく2つあります。
| 手段 | 特徴 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 試験紙タイプ | 液に浸して色の変化を見る。手軽で安価 | 日常的な確認、現場での簡易チェック |
| 測定器タイプ | 数値で表示される。試験紙より細かく読める | 記録を残したい現場、基準を管理したい場面 |
選ぶときに確認したいのが、測定できる範囲です。製品によって対応する濃度域が異なり、低い濃度の水道水向けに作られたものでは、高い濃度の測定に向かない場合があります。使いたい濃度域が測定範囲に入っているかを、製品の説明で確認してください。
もう一点、測定の対象となる項目にも注意が必要です。国民生活センターの資料では、有効塩素とは塩素ガス、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、酸化力を有する塩素化窒素化合物を総称したものと説明されています。測定方法によって何をどこまで捉えるかが異なるため、製品の説明で何を測るものかを確認したうえで、同じ方法で継続して測ることが実務的です。測るたびに方法を変えると、前回との比較ができなくなります。
3. どのタイミングで測るか
毎回測るのは現実的ではありません。押さえるべきタイミングを決めておくと、手間を抑えながら状態を把握できます。
- 新しく購入したとき、または生成したとき(出発点の記録)
- しばらく使っていなかったものを再び使うとき
- 保管場所や容器を変えたとき
- 使用感に違和感があったとき(においが弱くなった、結果が変わったと感じたとき)
- 汚れがひどい対象に使う前(200ppm以上が求められる場面)
特に重要なのが2番目です。買い置きして間が空いたもの、季節の変わり目に出してきたものは、当初と同じ状態とは限りません。シーズン前に在庫を確認する習慣とあわせて、濃度も見ておくと安心です。
4. 測った数値をどう判断に使うか
数値が出たら、用途に照らして判断します。厚生労働省、経済産業省、消費者庁の3省庁連名で示された注意事項では、拭き掃除に使用する際は有効塩素濃度80ppm以上、元の汚れがひどい場合などには200ppm以上のものを使うこととされています。
測定の結果が目安を下回っていた場合、選択肢は3つです。用途を変える、新しいものに入れ替える、あるいは必要な濃度が出せる手段に切り替える。濃度が足りないまま同じ用途に使い続けることだけは避けてください。効いているつもりで効いていない状態が、最も避けたい状況です。
- 80ppm以上:通常の拭き掃除に使える目安
- 200ppm以上:元の汚れがひどい場合に示されている目安
- 目安を下回った場合:用途を変えるか、入れ替えるか、手段を切り替える
- 記録を残す:測った日付と数値を控えておくと、低下の傾向がつかめる
5. 測らずに済ませるという選択肢
ここまで読んで、手間だと感じた方も多いはずです。測定器を用意し、タイミングを決め、記録を残す。衛生管理の本体ではない作業が積み上がります。
そもそも、なぜ測る必要があるのか。買い置きしたものが時間とともに変化するからです。裏を返せば、使う分を使うときに用意できるなら、この作業の大半は不要になります。
次亜塩素酸水生成機は、必要なときに必要な量をその場で作れることと、生成される水の有効塩素濃度とpHが仕様として示されていることが実務上の利点です。作りたてを使う運用であれば、保存による低下を気にする場面が減ります。なお、厚生労働省の資料に整理されている使用基準には、使用前にpHや有効塩素濃度などを確認することという項目が含まれています。生成機を使う場合も確認の考え方はなくなりませんが、把握すべき変数は減ります。
どの用途にどれくらいの濃度が必要かをお伝えいただければ、仕様が合うかをご案内できます。お問い合わせフォームから承ります。
よくある誤解と正しい確認方法
濃度の確認をめぐるよくある誤解は、「未開封なら表示どおり」「においの強さで濃度が分かる」「一度測れば以後は同じ」といった理解です。未開封でも時間の経過や保管条件によって低下しますし、においの強さは有効塩素濃度を正確に表す指標にはなりません。一度測った数値も、時間が経てば変わります。
確認の順序としては、まずラベルの数値が「製造時」「充填時」のものかどうかを見ます。次に、製造日または使用期限から経過期間を把握します。そのうえで、実際に測って現在地を確認します。測定手段を選ぶ際は、使いたい濃度域が測定範囲に入っているか、何を測る方法かを製品の説明で確認してください。
導入検討時の実務チェック
- 使いたい濃度域が、測定手段の対応範囲に入っているかを確認する
- 測定のタイミングをルール化し、家族やスタッフ間で共有する
- 測った日付と数値を記録に残す
- 目安を下回ったときの対応(用途変更・入れ替え)をあらかじめ決めておく
- 測定と記録の手間が、買い置き運用に見合っているかを見直す
共通注記
本記事は、次亜塩素酸水に関する公的機関の情報、公開資料、学術情報をもとに、衛生管理・除菌用途に関する一般情報として作成しています。特定の疾病の予防・治療、医療効果、人体への安全性を保証するものではありません。使用の際は、製品表示、濃度、pH、使用方法、対象物、各公的機関の最新情報をご確認ください。
参考情報
- 国民生活センター「物のウイルス対策等をうたう『次亜塩素酸水』」(2020年12月24日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20201224_1.html
- 同上 報道発表資料(PDF)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20201224_1.pdf
- 厚生労働省・経済産業省・消費者庁「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
- 厚生労働省「次亜塩素酸水」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
- 厚生労働省「次亜塩素酸水の食品添加物指定に関連する資料」(官報 平成14年6月10日 第3378号を含む)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf

