次亜塩素酸水生成機のランニングコストは「水と塩だけ」と説明されることがあります。ただ、実際に導入すると、どんな水を使えばよいのか、塩は何でもよいのか、といった疑問が出てきます。本記事では、公的な資料と製品仕様で確認できる範囲から、生成に使う水と原料について整理します。
1. 原料は「水」と「塩」だけなのか
厚生労働省の資料では、次亜塩素酸水は塩酸または食塩水を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液と定義されています。ここで注目したいのが、原料が一つではないという点です。
同資料によれば、強酸性次亜塩素酸水は0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して生成され、微酸性次亜塩素酸水は2〜6%塩酸を無隔膜電解槽内で電解して生成されるとされています。つまり、種類によって原料そのものが異なります。「塩だけ」という説明は、すべての方式に当てはまるわけではありません。
実際の製品でも、電解を補助する液として塩化ナトリウムと希塩酸を組み合わせた組成のものがあります。どの原料が必要かは、その機種がどの種類の次亜塩素酸水を生成する設計かによって決まります。導入前に、必要な原料とその入手方法を確認してください。
2. 水道水の水質によって結果が変わる
原料と並んで見落とされやすいのが、元になる水です。生成量や有効塩素濃度は、使用する水道水の水質や周辺環境によって変化します。製品の仕様に記載された数値も、一定の条件下での値として示されているのが一般的です。
水質が影響するのは、電気分解が水に溶けている成分の影響を受けるためです。地域によって水道水の硬度やミネラルの組成は異なり、同じ機種を同じ設定で動かしても、結果に幅が出ることがあります。
この点は、導入後の確認方法にも関わります。仕様に書かれた数値をそのまま前提にするのではなく、設置した環境で実際にどうなるかを一度確認しておくと安心です。厚生労働省の資料に整理されている使用基準にも、使用前にpHや有効塩素濃度などを確認することという項目が含まれています。
3. 井戸水・浄水を通した水はどうか
水道水以外を使えるかどうかは、よくいただく疑問です。ここは慎重に考える必要があります。
厚生労働省の資料では、原料について飲用適の水で希釈することが示されています。まず、飲用に適した水であることが前提になります。井戸水を使用している場合は、水質に十分な注意が必要です。厚生労働省は家庭での食中毒予防に関する情報の中でも、井戸水を使用している家庭では水質に十分注意するよう呼びかけています。
浄水器を通した水については、浄水器の種類によって取り除かれる成分が異なります。電気分解に必要な成分まで取り除かれている場合、想定どおりに生成できない可能性があります。いずれの場合も、機種ごとに指定された条件があるはずですので、メーカーの指示を確認するのが確実です。
| 水の種類 | 考え方 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 水道水 | 一般的に想定されている水 | 水質により生成量・濃度に幅が出る |
| 井戸水 | 飲用適であることが前提 | 水質検査の状況。メーカーの指定を確認する |
| 浄水器を通した水 | 取り除かれる成分により結果が変わりうる | 機種が想定している水かどうかをメーカーに確認する |
4. 塩なら何でもよいわけではない
食塩水を使う方式の場合、台所にある食塩で代用できるのかという疑問が出てきます。ここも確認が必要です。
食用の塩には、にがりやミネラル分、固結防止剤などが含まれている製品があります。これらの成分が電解の過程にどう影響するか、また電極にどのような影響を与えるかは、機種の設計によって異なります。厚生労働省の資料では、電極について白金、チタン等の電極部分が溶出しないものであることが示されており、電極は生成機の中核をなす部分です。
メーカーが指定する原料がある場合は、それに従うのが確実です。指定外のものを使って電極や装置に影響が出た場合、保証の対象外になることも考えられます。ランニングコストを抑えたい気持ちは自然ですが、装置の寿命と天秤にかけて判断してください。
5. 条件は機種ごとに違う
もう一点、安全に関わる重要な情報があります。厚生労働省の資料に整理されている使用基準には、生成装置の作動中は十分な換気を行うことという項目が含まれています。理由として、微量の塩素ガスと水素ガスの発生が挙げられています。
設置場所を決めるときは、生成量や寸法だけでなく、換気ができる環境かどうかも判断材料に入れてください。密閉された狭い空間に置く計画であれば、見直したほうがよい場合があります。
- 必要な原料(塩化ナトリウム/塩酸/指定の補助液)と入手方法を確認する
- 使用する水の条件(水道水か、それ以外を使えるか)を確認する
- 設置場所の換気が確保できるかを確認する
- 電極など消耗部品の交換周期と費用を確認する
- 設置後、実際の水質での有効塩素濃度とpHを一度確認する
これらの条件は機種によって異なります。使用する場所の水道環境、置き場所、必要な量をお伝えいただければ、条件に合うかをご案内できます。お問い合わせフォームから承ります。
よくある誤解と正しい確認方法
原料と水をめぐるよくある誤解は、「どの機種も塩と水だけでできる」「水道水ならどこでも同じ結果になる」「食塩なら何を使っても同じ」といった理解です。実際には、方式によって原料が異なり、水質によって結果に幅が出て、塩の成分は電極に影響しうるものです。
確認の順序としては、まず機種がどの種類の次亜塩素酸水を生成する設計かを確認します。次に、必要な原料と、メーカーが指定するものがあるかを確認します。そのうえで、設置場所の水道環境と換気の条件を見ます。最後に、設置後に実際の水で有効塩素濃度とpHを確認し、仕様どおりの範囲に入っているかを見ておくと、その後の運用が安定します。
導入検討時の実務チェック
- 機種が生成する次亜塩素酸水の種類(強酸性・弱酸性・微酸性)を確認する
- 必要な原料と、メーカー指定の有無を確認する
- 原料の入手経路と1か月あたりの必要量を把握する
- 設置場所の給水条件と換気条件を確認する
- 設置後に実際の水で有効塩素濃度とpHを確認し、記録する
共通注記
本記事は、次亜塩素酸水に関する公的機関の情報、公開資料、学術情報をもとに、衛生管理・除菌用途に関する一般情報として作成しています。特定の疾病の予防・治療、医療効果、人体への安全性を保証するものではありません。使用の際は、製品表示、濃度、pH、使用方法、対象物、各公的機関の最新情報をご確認ください。
参考情報
- 厚生労働省「次亜塩素酸水」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
- 厚生労働省「次亜塩素酸水の食品添加物指定に関連する資料」(官報 平成14年6月10日 第3378号を含む)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf
- 厚生労働省・経済産業省・消費者庁「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
- 食品安全委員会「次亜塩素酸水 評価書詳細」
https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20071024002

